前回の6月調査と比べると、大企業・製造業の業況判断DIは2ポイント上がり、大企業・非製造業は2ポイント下がった。同じ短観の同じ四半期で、方向が逆になっている。業況判断DIはプラスにもマイナスにもなり、動いた幅はポイントで示される。何を測った数字で、符号と水準をどこまで読めるのか。算出式から順に確認する。

業況判断DIの定義、「良い」から「悪い」を引く

業況判断DIは、回答した企業の構成比の差である。日本銀行の短観(全国企業短期経済観測調査)では、自社の業況を「良い」「さほど良くない」「悪い」の三つから選ばせ、D.I.=(第1選択肢の回答社数構成百分比)-(第3選択肢の回答社数構成百分比)として算出する。「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた値であり、単位は%ポイントだ。売上や生産の増減率ではない。

符号の意味はこの式から決まる。プラスは「良い」と答えた企業の割合が「悪い」を上回っている状態、マイナスはその逆、ゼロは両者が同じ割合であることを示す。+24と+35を並べたときに読めるのは、良いと悪いの差が後者のほうが11ポイント広いという一点である。良いと答えた企業が全体の何%なのかは、DIの値だけでは決まらない。

発表日の朝は、まず符号を確認する。プラスかマイナスかで、良いと悪いのどちらが多いかという大まかな方向はわかる。そこから先、どれだけの企業が「良い」と答えているかを一つの数字から読み取ろうとすると、水準の意味を取り違える。

※算出式と公表時期は日本銀行「短観の解説」による。

大企業DI、製造業+24・非製造業+35

2026年10月1日に公表された2026年9月調査では、大企業・製造業の業況判断DI(最近)が+24ポイント。前回6月調査の+22から2ポイントの改善である。大企業・非製造業は+35ポイントで、前回の+37から2ポイントの悪化。水準は非製造業が高く、方向は製造業が上向いている。水準と前回差は別の情報として読む。

川を挟んで並ぶオフィス街と工場地帯

短観には3か月後を見通す「先行き」のDIもある。9月調査の先行きは、大企業・製造業が+21ポイント、大企業・非製造業が+30ポイント。どちらも「最近」の水準(+24、+35)を下回る。プラスの範囲にとどまりながら、良いと悪いの差は3か月後にかけて縮む見通しという形になっている。「最近」の前回差と「先行き」の水準を混ぜて書くと、改善と悪化の向きを取り違える。

先行きDIも「最近」と同じ算出方法で出される差分であり、3か月後に良いと悪いの差がどうなるかという見通しを示す。今回はどちらも数字がプラスの範囲にとどまりながら、差が縮む方向で出ている。

※数値は日本銀行調査統計局「短観(要旨)」(2026年10月1日公表)、先行きの数値は大和総研の解説レポートによる。

規模別の内訳、四つの区分で方向が揃わない

規模を分けると数字は変わる。中小企業・製造業は9から14へ、5ポイントの改善。大企業・製造業の2ポイントより動きが大きい。中小企業・非製造業は15で、前回と同じ水準だった。

業況判断DI(最近)の前回比較、2026年6月調査と9月調査 業況判断DI(最近)の前回比較、2026年6月調査と9月調査 単位:ポイント 2026年9月調査 2026年6月調査 0 10 20 30 40 大企業・製造業 大企業・非製造業 中小企業・製造業 中小企業・非製造業 22 24 37 35 9 14 15 15

業況判断DI(最近)の前回比較、2026年6月調査と9月調査(単位:ポイント)
項目 2026年6月調査 2026年9月調査
大企業・製造業 22 24
大企業・非製造業 37 35
中小企業・製造業 9 14
中小企業・非製造業 15 15
出典:日銀短観(2026年9月調査)解説レポート/短観(要旨)(2026年9月)

動きの大きさも区分ごとに異なり、中小企業・製造業の5ポイントは、大企業・製造業の2ポイントより大きい。四つの区分を並べると、改善が二つ、悪化が一つ、横ばいが一つ。「短観が改善した」という一文にまとめた時点で、この差は見えなくなる。どの規模のどの業種の数字なのかを先に確認しておく。

比較の限界、同じDIでも回答構成は違う

業況判断DIで気をつけたいのは、公表される値が差分だけだという点だ。中間選択肢の「さほど良くない」の回答比率は式に入らない。同じ+20でも、回答がどのように分かれているかは一つに決まらない。仮の数字を置いて並べてみる。

三つの仕分けトレーに偏って入れられた白紙のカード
同じDI+20になる二つの回答構成(仮に置いた数字)
回答 構成A 構成B
良い 30% 50%
さほど良くない 60% 20%
悪い 10% 30%
業況判断DI +20 +20

構成Aは判断が中間に寄り、構成Bは両極に分かれているが、業況判断DIの値は同じである。公表される差分だけでは、この回答の分かれ方までは分からない。

規模や業種による違いも、同じ性質の限界に属する。全体の傾向と個々の区分の動きが一致しないことがあり、一つの数字で景気全体を代表させる読み方は幅を持たせたい。業況判断DIを成長率と取り違えないための確認手順は別にまとめている。

差分という形でまとめられた時点で、選択肢ごとの比率にあった情報は一つの数字に圧縮される。符号と前回との差を書き写したあとに、どの規模・どの業種の数字かを確認する一手順を加えると、読み取れる範囲が少し広がる。

※業況判断DIが差分のみを示す点と、規模・業種による差異の注意は、auカブコム証券の短観の見方の解説による。

公表は四半期ごと、次回は12月央

短観は四半期ごとに実施され、公表時期は4月初、7月初、10月初、12月央と定められている。9月調査の公表が10月初、その次が12月央にあたる。発表時刻を含む流れは、年4回の公表時期をまとめた記事で扱った。

発表日の朝は、まず前回との差を計算してしまう癖がある。ただ、2ポイントという差は、回答がどこから動いたのかまでは教えてくれない。数字を書き写したあと、規模区分と「最近」か「先行き」かをもう一度見る。そこまで確認して、ようやく一つの四半期分の材料になる。