金曜日の午前8時30分。総務省統計局のページを開き、全国消費者物価指数の2026年8月分を探す。公表は2026年9月18日。コーヒーを飲みながら総合指数と前年同月比を拾い、前回との差を計算する。
最初に目に入るのは102.2という数字だ。発表日の朝、最も誤読されやすい数字でもある。
消費者物価指数、2026年8月分の「102.2」
よくある誤読は「物価が1年で2.2%上がった」という読み方だ。102.2は上昇率ではない。2025年平均を100とした相対値である。
消費者物価指数は、世帯が購入する財・サービスの価格変動を総合的に測る指数だ。総務省統計局の「消費者物価指数のしくみと見方」によれば、2025年基準では2025年を基準時とする。102.2が示すのは2025年平均に対する水準であり、1年前と比べた変化ではない。
もう一つの誤読は、系列の取り違えだ。1.7%は生鮮食品を除く総合の前年同月比で、総合と、生鮮食品及びエネルギーを除く総合はいずれも1.9%である。どの系列の数字かを確かめてから読む。指数の種類は消費者物価指数の種類と前年同月比の読み方で整理している。
CPI、2026年8月分の前年同月比と前月比
総合は1.9%上昇だった。
| 系列 | 指数 | 前年同月比 | 前月比(季節調整値) |
|---|---|---|---|
| 総合 | 102.2 | 1.9%上昇 | 0.0% |
| 生鮮食品を除く総合 | 102.0 | 1.7%上昇 | - |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 102.5 | 1.9%上昇 | - |
前月比は季節調整値の列で確かめる。総合は0.0%だった。季節調整前の数字で前月比を語り、上司に指摘されたことがある。以来、必ずこの列を見てから語る。
※総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年8月分」
消費者物価指数の推移、1970〜2010年度
長期推移で起きやすい誤読は、基準の違う指数を同じ目盛りで並べることだ。基準改定を見落とし、長期比較を誤った経験がある。
| 項目 | CPI(除く生鮮食品) |
|---|---|
| 1970年度 | 35.4 |
| 1980年度 | 83.4 |
| 1990年度 | 100 |
| 2000年度 | 106.6 |
| 2010年度 | 103.8 |
日本銀行の「日本の物価変動の背景:事実と論点の整理」は、CPI(除く生鮮食品)を1990年度=100で示している。1970年度35.4、1980年度83.4、1990年度100.0、2000年度106.6、2010年度103.8。
1970年度から1980年度にかけて、指数は約2.4倍になった。2000年度から2010年度の変化は-2.8ポイントで、水準はわずかに下がっている。40年の推移は、前半の急上昇と後半の横ばいに分かれる。
※1990年度=100の年度系列である。2025年平均=100の102.2とは基準が異なり、水準を直接比べることはできない。
CPIの上昇局面と下落局面、1970年代〜2022年
同じ資料は、CPI(除く生鮮食品)の前年比平均を年代ごとに示し、背景を説明している。
| 期間 | 前年比平均 | 主な背景 |
|---|---|---|
| 1970〜1979年度 | 9.2% | 第1次石油危機 |
| 1990〜1999年度 | 1.0% | 成長率・輸入物価の低下、耐久消費財価格の下落 |
| 2000〜2009年度 | マイナス0.3% | 後半に国際商品市況の高騰と下落 |
1970年代の上昇局面は、第1次石油危機が大きな背景だった。1990年代は上昇率の平均が1.0%まで低下した。
2000年代の前年比平均はマイナス0.3%。後半には原油価格など国際商品市況の高騰と下落が、物価を上下に振れさせた。
2022年は再び上昇局面に入った。ウクライナ情勢を受けた国際商品市況の上昇と急速な円安が輸入財価格を押し上げ、食料品などの販売価格に波及した。2022年10月の生鮮食品を除く総合は、前年同月比3.6%上昇まで高まった。
並べると、上昇局面の背景には石油危機や国際商品市況など、海外発の価格変動が繰り返し現れる。調査員としては共通点の指摘にとどめ、局面ごとの大きさは数字で個別に確かめている。
※2022年の記述は日本銀行「野口審議委員「わが国の経済・物価情勢と金融政策」」(2022年)による。
CPI、2025年基準の長期系列と作り方の注記
長期グラフを自分で描く場合、起点は総務省統計局の2025年基準長期時系列データになる。全国の「持家の帰属家賃を除く総合」は1946年8月分から掲載されている。旧基準系列を2025年平均=100に換算した接続指数も用意されており、基準の違う年代をつなぐ作業では、まずこの接続指数から系列を取り出している。
- 対象は589品目。
- 全国167市町村、約2万8千店で、毎月約20万の価格を調査する。
- 品目ごとの価格を、家計の支出額をもとにしたウエイトで加重平均する。算式はラスパイレス型。
- 全国の前月分は、原則として毎月19日を含む週の金曜日午前8時30分に公表される。
賃金側の長期推移は実質賃金の推移、1990〜2025年の年平均にまとめている。
※総務省統計局「消費者物価指数の作り方」「消費者物価指数(CPI)結果」
次回、全国の2026年9月分は2026年10月23日(金)午前8時30分に公表予定だ。