長期データの114.0と最新の102.2を並べ、物価が下がったと読む誤りがある。指数の水準は基準年で決まるため、基準年の異なる数値はそのまま比較しない。114.0は2020年=100の系列の2025年、102.2は2025年=100の系列の2026年8月分だ。推移を追う作業は、系列をそろえることから始まる。

インフレ率の定義、CPI前年同月比と長期データの範囲

この記事では、日本のインフレ率を全国CPIの前年同月比として確認する。基準年を100とする指数を総務省統計局が毎月公表する。長期時系列は、総合指数が全国・東京都区部ともに1970年分から、持家の帰属家賃を除く総合指数は1946年8月分まで遡れる。式はインフレ率の計算方法に分けた。

2025年=100への切り替え、第17次基準改定

2026年8月から、消費者物価指数は第17次基準改定で基準年とウエイト参照年次が2025年になった。最新の全国分は2026年8月分、総合指数102.2、前年同月比+1.9%。公表日は2026年9月18日。基準年の異なる指数水準は、そのまま比較しない。長期の水準を比べるときは、同じ基準の系列を取り直す。

※新基準の内容は総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数の解説」による。

四つの局面、1974年からデフレ期、そして直近

持家の帰属家賃を除く総合指数(2020年=100)で局面を並べる。第一次石油危機後の1974年は、前年の38.7から48.1へ約24%上昇した。バブル期は緩やかで、1986年84.8から1990年89.7へ4年で約6%。1998年の97.6をピークに下落へ転じ、2011年は93.2まで約4.5%下がった。政府は2001年3月の月例経済報告で「緩やかなデフレ」と判断している。直近は2021年99.7から2025年114.0へ、4年で約14%。

持家の帰属家賃を除く総合指数、代表年(2020年=100) 持家の帰属家賃を除く総合指数、代表年(2020年=100) 単位:指数 0 50 100 150 1973年 1974年 1986年 1990年 1998年 2011年 2021年 2025年 38.7 48.1 84.8 89.7 97.6 93.2 99.7 114

持家の帰属家賃を除く総合指数、代表年(2020年=100)(単位:指数)
項目 持家の帰属家賃を除く総合指数
1973年 38.7
1974年 48.1
1986年 84.8
1990年 89.7
1998年 97.6
2011年 93.2
2021年 99.7
2025年 114
出典:imidas(平凡社)解説「デフレーション」/日本銀行「教えて!にちぎん」消費者物価指数の推移解説

※代表年の指数は日本銀行「教えて!にちぎん」より。

比較の限界、分母と系列

上昇率はどの年を分母に置くかで見え方が変わる。バブル期の指数は84.8から89.7へ4年で約6%、直近は99.7から114.0へ4年で約14%上がった。この期間を1年当たりの複利で計算すると、バブル期は約1.4%、直近は約3.4%になる。累積率の差(約6%と約14%)より1年当たりの数値差は小さく見えるが、上昇ペースには差がある。年平均と月次、総合と除く系列も混ぜない。基準改定を見落として長期比較を誤ったことがあり、以降は系列名と基準年を先にメモしている。

机の上で分厚い合本を開く手と筆記具

先行きの数字、2026年度コアCPI見通し+2.8%

日本銀行は2026年4月の展望レポートで、2026年度のコアCPI見通し(中央値)を+1.9%から+2.8%へ0.9ポイント上方修正した。背景は中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰だという(野村総合研究所の木内登英コラム、2026年7月)。総合とコアの差は2026年8月分の総合1.9%とコア1.7%の違いに書いた。基準は2025年=100。