景気動向指数の速報を開いて最初にするのは、CIの当月値から前月値を引くことだ。前回との差が出れば、方向はすぐ分かる。ただし、その差が「これからの話」なのか「いまの話」なのか「終わった話」なのかは、どの指数を見ているかで変わる。先行・一致・遅行という軸と、CIとDIという軸。二つを取り違えると、前月差だけを追っても読み方がずれる。
三つの指数、先行・一致・遅行
まず役割で並べる。先行指数は一致指数に数か月先行して動くため、景気の先行きを予測する目的で使う。一致指数は景気とほぼ同時に動き、景気の現状把握に使う。その転換点は景気局面の転換点とおおむね一致する。遅行指数は一致指数から数か月〜半年ほど遅れて動くため、景気転換の事後的な確認に使う。
語呂にするなら「サキヨミ・イマ・アトヅケ」。先行はサキヨミ、一致はイマ、遅行はアトヅケ。三つを口に出す順番が、そのまま役割の順番になる。
※内閣府経済社会総合研究所「景気動向指数の利用の手引」による。
CIは大きさ、DIは向き
CI(コンポジット・インデックス)は、採用系列の前月と比べた変化の大きさを合成した指数で、景気拡張・後退の勢い、つまり量感を表す。DI(ディフュージョン・インデックス)は、採用系列のうち3か月前と比べて改善している系列の割合を%で示し、変化が経済部門のどこまで広がったか、波及度を測る。
頭文字で覚えると混ざりにくい。Cは変化(change)の大きさ、Dは方向(direction)の広がり。「CIはどれだけ動いたか、DIはいくつが上を向いたか」。指数と%という単位の違いでもある。二つは対立する指標ではなく、併用が望ましいとされている。
採用系列は11・10・9
採用系列数は先行11、一致10、遅行9の合計30系列。先行から順に一つずつ減る並びなので、数字そのものが覚え方になる。
| 指数 | 系列数 | 主な用途 | 代表系列の例 |
|---|---|---|---|
| 先行 | 11 | 先行きの予測 | 新規求人数(除学卒)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数 |
| 一致 | 10 | 現状把握 | 生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒) |
| 遅行 | 9 | 事後的な確認 | 常用雇用指数、完全失業率、消費者物価指数 |
※系列数と代表系列は内閣府経済社会総合研究所「個別系列の概要」による。
具体例で見ると、新規求人数は先行系列に、常用雇用指数・完全失業率・消費者物価指数は遅行系列に置かれている。同じ雇用や物価に関わる系列でも、先行と遅行に分かれている点が覚えやすい。完全失業率の定義と推移や消費者物価指数の種類と前年同月比の読み方を先に押さえておくと、遅行指数の動きも追いやすくなる。
三つの関係と、読む順番
三つは別々の指標ではなく、一致指数を真ん中に置いた時間差の並びだ。だから読むときも一致から入る。
- 一致指数のCIで、いまの勢いを見る。
- 一致指数のDIで、その動きがどこまで広がっているかを見る。
- 先行指数で、数か月先の方向を見る。
- 遅行指数で、過去の景気の動きを事後的に確認する。
誤読になりやすいのは、遅行指数の悪化をそのまま「いまの景気の悪化」と読むところだ。遅行指数は一致指数から数か月〜半年遅れて動く。同じ月の数字でも、指しているのは少し前の局面になる。
公表元と、確かめる場所
景気動向指数を作成・公表しているのは内閣府経済社会総合研究所である。直近では2026年9月7日に、2026年7月分の速報が公表された。結果の概要、速報、系列別のExcelが同じページに並ぶので、定義を確認したあとで実際の系列を開くのが早い。
調査員として一言。前月差を計算する前に、いま開いている列が先行・一致・遅行のどれかを確かめる。季節調整前の数字で前月比を語って指摘された経験からすると、数字を拾う速さより、列の名前を先に読む癖のほうが長く効く。